不動産業界のIT化の流れとして、コロナ禍により、外出する事が憚られた期間があった為、ZOOMその他WEBミーティング用のツールを使用した「IT重説」は急速に一般的になり、現在実施されている不動産会社も多くあるかと思います。
IT重説やオンライン内見が定着してきた中、業界のIT化は加速し、2021年に宅地建物取引業の書面電子化を可能とする法改正が行われ、2022年5月から施行されました。それによって、これまで紙媒体での交付が義務付けられていた賃貸借契約書及び重要事項説明書の交付が電磁的記録の提供・交付でOK、という事になりました。
今回は不動産賃貸借の電子契約について、深堀りしたいと思います。
2023年1月時点で、不動産に関する電子契約が可能な取引は以下の通りです。
①媒介契約書
②重要事項説明書
③賃貸借契約書
④業務委託契約書(マンション管理業務等)
⑤定期建物賃貸借契約書
⑥賃貸借契約の更新覚書
その他、委任契約書や保証契約書等多岐にわたって電磁的書面での記録・保存ができる状態であれば電子化が可能となりました。あくまで、相手方の承諾を得ている事が前提になりますが、不動産取引のIT化の環境が整備されています。
参考文献:『重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル』(国土交通省 令和4年4月発行)より
不動産取引のIT化については、国土交通省が主体となって進めてきました。
参照HP:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html
国土交通省『ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について』より抜粋
令和元年10月から、賃貸取引に関する電磁的方法に関して、社会実験を開始し、その結果を踏まえて円滑かつ適正に実施できるよう議論を進め、2021年に法改正、2022年から実施可能となりました。
法の制度は整い、実施ツールは様々な企業が提供されている電磁的契約ツールを利用する事で実施可能となりました。では実際に使用する不動産業者には、どこまで精通しているのでしょうか。
とあるサイトの調査では、「賃貸契約を行う際に約7割が対面で手書きを行っている」という結果となっていました。前述の通り、令和に入ってから急ピッチで進められた環境整備ですので、現場が追い付けていない状況と感じます。
電子化の許可が下りた賃貸借契約書・重要事項説明書に加え、分譲マンションへ賃借人が入居する為には、マンション管理組合に提出する入居者名簿や第三者使用届等、一部複写式の書類があります。こちらは対面での対応義務が無いため、郵送のやり取りで対応する事が可能なのですが、不備があった場合は、再度発送し直して署名をもらい、、、等、結局のところ全ての段取りを対面で進めた方が効率が良い、となってしまっております。
アナログベースの取引が主体だった不動産業界において、全ての工程を電子化する事は非常に難しく、本格的に取り入れている不動産業者はまだ少ないかと思います。その中でも、効率化及びコスト削減、貸主借主双方の手間を省く等の観点から、業界全体に広がり、一般的なものとなる事を切に願います。
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