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2023年5月31日

相続は明確です

イラスト05
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『相続』、皆様もこの言葉はご存知のはずです。

ただ、具体的にどのような決まりがあるかご存知でしょうか。

知っているようであまり知らない相続について、今回は取り上げたいと思います。

チャプターⅠ 相続人の資格

民法において相続の条文はかなり細かく、明確に定められています。

例えば、民法における相続人の規定です。

第887条1.被相続人の子は、相続人となる。第886条1.胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。第890条1.被相続人の配偶者は、常に相続人となる。以下略

上記は民法より抜粋しました。

簡単に各条文を解説すると、

第887条

1.亡くなった者(被相続人)の子は相続人となる。

第886条

1.生まれる前の子供(胎児)は、相続に関して生まれているものとしてあつかわれる。

第890条

1.亡くなった者の配偶者は、常に相続人となる。

こんな感じです。

相続人になれる人が明確に決められています。

【参照条文】

第887条  第886条 第890条

チャプターⅡ 法定相続分

法定相続分についても同じように明確に定められています。

第900条1.同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする

参考までに、法定相続分というのは、読んで字のごとし。

法律で決められている相続分のことです。

条文を表にまとめてみると、こんな感じになります。

法定相続分

相続順位 配偶者以外の相続人 配偶者の相続分 配偶者以外の相続分
第一位 被相続人の子 2分の1 2分の1
第二位 被相続人の直系尊属 3分の2 3分の1
第三位 被相続人の兄弟姉妹 4分の3 4分の1

さらに相続順位を図にすると、こんな感じです。

画像2

まず、被相続人の配偶者は常に相続人となります。

そして、被相続人に子供がいれば子供が相続人。

被相続人に子供がいなければ、被相続人の親。

被相続人に親もいなければ、被相続人の兄弟が相続人となります。

このような順位で民法には定められているのです。

 

注意いただきたいのは、これらの記述はあくまで法定相続分についてということです。

遺言によって法定相続分とは別の相続分を定めることも可能です(第902条)。

【参照条文】

第900条 第902条

 

Ⅲ 遺言について

相続に関わる中で、他にも明確に定められているものがあります。

『遺言』の書式です。

第960条1.遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。第961条十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

「この法律」とはもちろん民法のことです。

つまり、遺言は民法の方式に従わなければ、することができないと規定しているのです。

そして、民法の方式については第967条に規定されています。

第967条1.遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

この条文から、遺言は

①自筆証書遺言(第968条)

②公正証書遺言(第969条)

③秘密証書遺言(第970条)

④特別方式の遺言

に分類されます。

 

①自筆証書遺言とは、その名の通り自分で書く遺言です。

自筆証書遺言の要件は以下の通りです。

・氏名、日付、全文を自分で書く。

・押印。

ということは、ワープロで作成することはダメです。

逆に、自筆証書遺言で許されているものを挙げると、

・拇印

拇印も押印として認められます。

・ペンネーム

書いた本人を特定することができれば、有効となります。作家等は可能かもしれませんが、一般人だと難しいかもしれません。

・運筆

自力では文字を書くことが難しくなった方が、補助を受けて書く方法です。補助を受けて書いたものが自書と

いえるのかと疑問を持つ方もいらっしゃるかと思います。

判例(最判昭62.10.8)で、補助が単なる支えであれば遺言は有効とされています。

 

②公正証書遺言とは、公証人に作成してもらう遺言です。

・証人2人以上の立会い

・遺言者が遺言の趣旨を公証人に口で伝える。

・公証人が、遺言内容を筆記し、これを遺言者と証人に読み聞かせるか、閲覧させる

・遺言者と証人が内容確認後、各自が署名と押印をする。ただし、遺言者が署名できない場合は公証人がその旨を付記すると署名に代えることができる。

・公証人が以上の方式に従って作成した旨を付記して署名押印をする。

この方式は、遺言が遺言者の手元だけでなく公証人役場にも保管されるため、紛失を防げます。また、公証人が作成していることもあり、法律的にも問題ない遺言ができあがります。

ただし、遺言の内容が、公証人と2人の証人に知られてしまうという欠点がございます。

 

③秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしたまま、遺言が存在することを公証人に証明してもらう方式です。

・遺言者が遺言を作成して、署名押印をする。

・署名押印した遺言を遺言者が封筒にいれ、遺言に押印した印鑑で封印をする。

ここまでの作業は遺言者が1人でできます。そして、遺言は封印された封筒の中に入っている状態です。

そして、

・遺言者が公証人と証人2人以上の前に封筒を提出し、自分の遺言であること及び氏名住所を申述する。

・公証人が、遺言を提出した日付と先ほどの申述を封筒に記載し、公証人、遺言者、証人が封筒に署名押印をする。

以上が、秘密証書遺言のやり方です。

ちなみに、秘密証書遺言の場合は、自書が要件ではないためワープロでの作成も問題ありません。

ただし、遺言の印影と封印に施した印影が違うと、秘密証書遺言としては無効になります。

この点については注意が必要となってきます。

【参照条文】

第960条 第967条 第968条 第969条 第970条

④特別方式の遺言について。

死亡危急者遺言(第976条)・伝染病隔離者遺言(第977条)・在船者の遺言(第978条)・船舶遭難者の遺言(第979条)と規定されています。状況や場所が特殊な場合の遺言の作成方法が定められています。

一般向けではないので、内容については割愛させていただきます。

【参照条文】

第976条 第977条 第978条 第979条

 

Ⅳ:遺言の撤回

以下の条文により、遺言はいつでも撤回ができます。

第1022条遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

遺言の方式に従うとされていますので、自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回することもできます。

遺言は、被相続人の死ぬ前の最後の意思表示のチャンスです。

死ぬまでの間に気が変わることもあるでしょう。そのため、遺言の撤回の方法に関しても明確に規定されているのです。

 

 

相続に関する事項について明確に決められていることがおわかりいただけたでしょうか。

今回はその一端を記したにすぎず他にもまだまだございます。

では、なぜ明確にする必要があるのか。

相続はもめることが多々あるからです。多々あるからこそ、少しでももめごとを減らすため明確に規定しているのです。

昔も今も相続でもめるということは、人間の本質は昔から変わっていないのかもしれませんね・・・。

 

 

チャプターⅤ 追記 (配偶者居住権・配偶者短期居住権)

2020年4月より配偶者居住権という制度がスタートしました。

夫婦のどちらか一方が亡くなった場合に,残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物(夫婦で共有する建物でも構いません)に、亡くなるまで、もしくは一定期間、無償で使用する、または収益をする権利です。

 

ここで気を付けていただきたいのは、配偶者居住権は第三者に譲渡したり、所有者に無断で建物を賃貸したりすることはできません。所有権ではないので、できることは限られます。

ただ、相続財産の内容によっては、配偶者居住権を取得した方が預貯金等の遺産よりも得する場合が生じます。

なお、この配偶者居住権は、遺言による遺贈や、遺産分割協議によって取得することができ、配偶者居住権の設定の登記もすることができます。

【参照条文】

第1028条

 

最後に、配偶者居住権とは別に配偶者短期居住権という制度もあります。

こちらは、残された配偶者が、亡くなった人の所有する建物に居住していた場合に、

遺産分割協議により居住建物をどのように処分するか確定した日、もしくは相続開始から6カ月を経過するいずれか遅い日まで無償で建物に住み続けることができる権利です。

こちらの権利はあくまでも「一定期間住み続けられる」権利のみで収益はできません。

また、設定登記もすることができません。

【参照条文】

第1037条

 

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