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2022年5月13日

原状回復について ペット編

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「ペット飼育による原状回復費用」について検討してみたいと思います。

一般的は負担割合については、ご存知の方も多いと思います。近年はペット飼育可能な物件(マンションや戸建)も増えてきておりますので、ご参考いただけますと幸いです。

「原状回復の基本的な考え方」

現在の原状回復の考え方は居室内の損耗等を
【A 経年変化・通常損耗】と
【B 借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等(以下「通常使用を超えるような使用による損耗」といいます。)】
の2種類に分かれます。

「経年変化」とは、建物・設備等の自然的な劣化・損耗等のことを指し、「通常損耗」とは、借主の通常の使用により生ずる損耗等のことを指します。(例:テレビや冷蔵庫の後部壁面の黒ずみや、壁に貼ったポスターの跡など。)

特約がない限り、【A 経年変化・通常損耗】に関する補修費用は「貸主」負担となり、【B 通常使用を超えるような使用による損耗】に関する補修費用は「借主」負担となる、ということです。

【国土交通省ガイドライン】

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

 

以上の知識を前提にした、今回は応用編になります。

【ケース1】
<ペットの飼育自体が契約で禁止されている場合>

ペットの飼育が契約で禁止されているにもかかわらず、物件内でペットを飼育することは契約違反行為となります。したがって、この場合、ペットを原因として発生した損耗はすべて

【B 通常使用を超えるような使用による損耗】となり、たとえば、ペットによる臭いの消臭費用やペット飼育による汚れがある場合のクリーニング費用は借主の負担となります。

また、クロスや柱等のひっかき傷や噛みつき傷の補修費用も借主の負担となります。

ただし、消臭費用やクリーニング費用は全額借主に負担させられると考えられるのに対し、カーペットやクッションフロア、クロスなど経過年数を考慮する必要があるものについては補修費用全額を請求できるケースは限られますので注意するようにしてください。また、ペット飼育が契約で禁止されている場合であっても
ペット飼育による汚れとは関係のないクリーニング費用を請求することは当然にはできません。

 

【ケース2】
<ペットの飼育自体が契約で禁止されていない場合>

ペット飼育禁止特約が「ない」場合、ペットを飼育すること自体は契約で禁止されているわけではありません。また、単にペットを飼育することそれ自体が賃貸借契約において予想される通常の利用方法の範囲を超えているとも考えられません。そこで、ペット飼育禁止特約がない場合は、ペット飼育それ自体は許容されると考えられます。

しかし、いくら許容されるといっても、「どのような使い方をしてもいい」ということにはなりません。これは、例えば「家具の設置」と同じです。家具の設置は多くの賃貸借契約で許容されています。しかし、だからといって物件を傷つけるような設置の仕方をしていいわけではありません。借主は当然、物件を傷つけることのないように慎重に設置する必要があります。ペットの場合も同じであると考えます。

借主には,物件の善管注意義務(民法400条)がありますし、契約の定めや目的物の性質に応じた方法で
使用収益しなければならないという用法遵守義務(民法616条、594条1項)もありますので、物件を傷つけることのない範囲内でペットを飼育することが当然求められます。

そこで、ペットの飼育が特約で禁止されていないとしても、ペットを原因として発生した損耗はすべて【B 通常使用を超えるような使用による損耗】となり、借主の負担となると考えます。

(国交省ガイドラインも「共同住宅におけるペット飼育は未だ一般的ではなくペットの躾や尿の後始末などの問題もあることからペットにより柱、クロス等にキズが付いたり臭いが付着している場合は賃借人負担と判断される場合が多いと考えられる。」と述べています。)

したがって、たとえば、ペットによる臭いの消臭費用や、ペット飼育による汚れがある場合のクリーニング費用はペットを原因とする損耗となるため、借主の負担となると考えます。また、クロスや柱等のひっかき傷や噛みつき傷の補修費用も借主の負担となると考えます。

ただし、借主に費用負担させられる場合であっても、消臭費用やクリーニング費用は全額借主に負担させられると考えられるのに対し、カーペットやクッションフロア、クロスなど経過年数を考慮する必要があるものについては補修費用全額を請求できるケースは限られますので、注意するようにしてください。

このように、
「ペットの飼育が特約で禁止されている場合」
「ペットの飼育が特約で禁止されていない場合」のいずれのケースでも、ペットを原因とする補修費用は
借主の負担になると考えています。
(必要に応じて経過年数を考慮するとしても)

ただし、「ペットの飼育が特約で禁止されていない」ということを超えて、「積極的にペット飼育を許可している」「ペット可を謳い文句として入居募集をした」というケースでも同じように考えてよいかというと疑問です。

というのも、確かに理屈では、先ほどの「家具の設置」の例と同じように、ペット飼育が契約で許容されているからといって、物件を傷つけるような飼い方をしていいわけではありません。したがって、ペットの飼育を積極的に許可している場合でもペットを原因とする補修費用は借主の負担となるはずです。
(必要に応じて経過年数を考慮するとしても)
しかし、積極的にペット飼育を許可した物件では、ペットを飼育することで損耗等が発生することは覚悟している(リスクを積極的に引き受けている)とも考えられます。とりわけ、ペット飼育を許可する代わりに家賃設定が一般相場より高く設定されている場合は、そのリスクを家賃に織り込んでいると評価できます。

つまり、募集条件や賃料設定額次第では、ットを原因とする補修費用を借主に負担させることが公平か、
という議論が生じますので、裁判所が補修費用借主負担を認めない可能性があります。

そこで、ペットの飼育を積極的に許可している場合にもなおペットを原因とする補修費用を借主負担とする
ためには、特約を明確に、誤解のない形で、金額も一義的に定めておくことをお勧めいたします!

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